2017年02月

誰が見たって
真面目な普通の高校生にしか見えない
ミキはさっきの電話は何かの
間違いではないかと思う
だいたい、男の子の方が
悪いに決まっている

速水に関しては親バカになってしまう
sexに関してはプロ中のプロだし
そういう女がいることは
一番、ミキが知っているはずなのに

着替えに部屋に行こうとする速水を
止めたのは夫の方だった
沢村は娘のこういうことを
何故、そんなふうに受け入れられるんだろう
ミキは不思議なものを見るように
夫を見た

速水は嬉しそうにソファに座った
父親がこういうふうに速水を呼び止める時には
速水にとっておきのプレゼントがある時だからだ
それほど、沢村は平然と普通だった

「それに、それが悪いことだと思うのはやめよう
そういう特性なんだよ
それは数学が得意だとか
国語が得意だとか
本を読むのが好きだとか
絵をかくのが好きだとか
それと同じだよ」

それは言われなくてもわかっている
だって、そういう母を持ち
妹を持っているのだから
でも、世の中ではそんなもの
世の中で殺人が好きという次くらいに嫌われるのだ

「そうね、そうだけど・・・・」

そんなことを話していると速水が帰ってきた
まったくいつも通り
そして、色白で清楚そうだ
今どきの女子高生のようにメイクをするわけではないし
見た目もスタイルがいいとか
かわいいとか美人だとかではない

沢村は茫然と立っているミキをソファに座らせた
沢村は速水を目の中に入れても痛くないほど
かわいがっていたが、そこに怒りや悲しみはなさそうだった

ミキははっと気が付くと

「ごめんなさい、私のせいだわ
ちっとも気が付かなかったし
速水がそんなことになっているなんて・・・」

そう取り乱して泣き出した
そして、やはり、蛙の子は蛙だし
沢村と結婚したことは間違っていたのだと
心から思った

沢村はそんなミキの心が手に取るように分かった

「違う!そうじゃない!
僕の母はどんな人か知っているはずだ!」

確かに、二人ともまともな生い立ちではなかった
娘を風俗嬢に就職させる母親
ずっと、日陰の身で満足した母親

二人の母親がそこから逃げようとして、もがいた
二人の目の前に立ちふさがった

速水が普通の高校生活をしていると
信じて疑わなかった、ミキにとって
それは衝撃の電話だった

それは同じ高校に通っている男の子の母親だった

「うちの子が悪いんじゃないんですよ
なんですか、誰にでもっていうじゃないですか
休み時間に誰とでもなんて
うちの子なんて純情ですからね
何とかしてくださいよ」

何のことかわからないミキの横で
沢村が立って一緒に聞いていた
沢村はそれがどういうことかすぐに理解したようで
受話器をミキからとると

「わかりました
本人が帰ってきましたら詳しく聞いて
また、連絡いたします」

普通の家の子で普通の家族に囲まれて
普通の女子高生ならば、どんなに楽か・・・

速水は授業が始まると、慌てて自分の体を振り捨てて
クラスに戻る男の子にがっかりして
制服を元に戻して、そっと、あたりを見回して
男子トイレから出て行った

わかっている
速水のことが好きで
休み時間に男子トイレに連れ込んで
好きにされているんじゃないことくらい

速水だって、特別にさっきの男の子が好きとかじゃない
ちょっと、べたべたされて、何となくそばに寄りたくて
くっついていると気持ちよくて
まぁ、そんなことから始まった

そして、男の子の間では
沢村速水は絶対いける!
そんな噂が立った
ただ、放課後はだめで、休みの日も家から出てこない
そうなると必然的に、授業の合間の休み時間になる

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