2017年05月

正二はそれまで店の女の子たちは
商品としか見ていなかった
自分を育ててくれたじいさんや江さん
そして、その仲間たち
嫌いではないがどうしようもないやつらだ
とも思っていた
感謝はしている、だからその頃のメンバーだけは
破格のお金を払っていた

ミキを見た時
正二もまだ十代だったが
ミキもまだ若かった
そして、ここに来る若い女のことは
全く違っていた
ここにくる子は皆、何らかの家庭の事情を持ち
ロクでもない親に育てられたのが一目でわかる
目つきをしていた
どんな美しい子でもそうだ
無垢な目の子もたまにいるが、そういう子は
家族も手を焼く発達障害の子だ

そのどれでもない
ミキは正二のプロデュースなど全く必要としない
とにかく売れた!
それは彼女の美しさもあっただろうが
正二は彼女にはこの望んでいない環境にいても
自分をちゃんとプロデュースする力があることを
見抜いた

莫大な利益を生むようになったころ
チェダックは薬のやりすぎで死んだ
もちろん、遺産は正二が相続する手続きは終わり
すべてが正二のものとなった

じいさんが江さんに

「正二はチェダックがほしがればほしがるほど
際限なく薬物を与えていたからな」

「いいんじゃないの
チェダックは最高の幻影を見て死んでいったんだから
本望だったと思うよ
お金がなかったら、どうせ酒か変な病気で
死んでいたでしょうからね
正二のためになっただけでも生きてたかいがあったんだよ」

そんなころ、正二が惚れたのが
ミキだったのだ

普通の人間が考えたらとんでもない奴だと
思われることだろう
この仕事を始めたのも、16歳の時だ
でも、チェダックはすぐに彼が連れてくる男の子の
趣味の良さとか、着せる服のセンスとか
がものすごく御客の好みをわかっているのを感じて
店を任せることにした
正二は数字にも強いから経営はあっという間にうまくいって
正二がやるようになってから、女たちも
別にボーナスなんかもらえるようになって大喜びだ

じいさんと江さんなんて
苦労して育てた買いがあったと喜び合った

正二は風俗の企画に関してはすぐに有名になり
ほかの店からもコンサルタントを頼まれるようになり
商売の男の子や女たちも、正二の元なら
自分の一番いいところを引き出してもらえて
お客のニーズに的確に合わせることができる
だから、お金も高い給料がもらえる
そのことがわかってくると、この店で働きたがる人間が増えた

そうなると、お客、その手の雑誌、特にネット
正二は若いからすぐにネットを使いこなした
ネットからこの店を知ってやってくる人間は全国レベルになった

正二は生まれが生まれだから
女でも男でも体を売らせることに
罪悪感がない
だいたい、ここで働いている女たちだって
いやいや働いている女はいない
誰もがほかに能力はないし
誰にもわからなければまぁ、割と簡単にお金になるから
それに何よりも男に抱かれることがいやじゃない
まぁ、好みかそうでないかとか、生理的に無理とかあるけれど
それは,歯医者がどんな糞爺の口だって手が入れられるのと一緒で
慣れれば何のことはない
フランスのことわざに
人はギロチンにかかることすら慣れればなんともない
なんて言葉があるそうだが、まさにそんなことだ

だから、あの教師たちのようにこの仕事が悪だとか
考えたこともないのだ
正二が知っている限り、客に教師なんかたくさんいる
この仕事だって世の中に必要なものなのだ

繁華街でぐれている美少年を探す
そして、ゲイの店に入り浸り
徹底的に傾向と対策を練る
すると、正二のようなタイプが好きな芸もいるし
ただ、見た目だけじゃなく
やはり、人間性が大事なんだと言うことも学び
多くの大人の男と付き合ってみて
完全にその世界を把握すると
美少年たちを手玉に取ることを覚え
そして、正二を忘れさせないようにする
そして、電話だけでそんな男の子を売り買いすることを覚えた

これは、元手いらずのかなりの儲けになった
女を商品にするよりも儲かる
この世界は男のほうが相手を探すのにハードルが高いから
お金に糸目をつけない人間も多い

そして、チェダックもそうだった
正二に頼めば一番、気に入った相手を都合してくれる
正二が手放せなくなったチェダックは
すっかり、正二の思うとおりになり
店も正二に任せるようになった

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