2019年07月

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何でも考え方が康太寄りの章子にしたら
結婚するときに、仕事をしていたわけでもなく
自分の貯金はゼロ
でも実家の親から5千万も持たされてきた母が
速水やみぃの財産についてとやかく言うのはおかしい
だいたい、あの二人は働いて財産を築いたのだ
その前に親の資産があったわけでもない
章子はそんなことを思いながら

「星人君は才能があるから
中学の時からアメリカに行ってるわけじゃなくて
やりたいから、やりたいようにしただけでしょ
大人になっても、仕事をして稼がなくても生きていけるんだから
いいんじゃない」

「そうかしら?
やっぱり、ちゃんと仕事につかなきゃ!
甘やかすのもほどほどにしたらいいのに」

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小百合は章子に少し嬉しそうに

「速水さんのところの、星人君
そろそろ有名になってるかと思えば
何の話も聞かないわね~
パパの一族ってお金はあるし
頭もいいんだと思うけれど
なんだか、変わってるわ
あの子も、音楽留学って言っても
何か賞を取ったとかじゃないし
どうせ、速水さんがたっぷり送っているんでしょうね
あそこって、ご主人よりも速水さんの財産が
すごいみたいだしね
おしゃれで、地に足がついていない生活よね
星人君、中卒ってことじゃない
そんな才能があるわけでもないのに」

小百合がお金のあるみぃや速水に
嫉妬するのは今に始まったことではなかった

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「やっぱり、そう言うことだったのね」

「そう、あの店で正二さんがお金を儲けて
それを元手に株を始めて莫大なお金に増やしたのだけれど
その、儲けたお金はお姉ちゃんが
障害のある人に優しかったから
口コミで、そのことが広がって
お金のある障がい者なら北海道や九州からも
お姉ちゃんを指名しに来たらしいからね

あんまり、そう言うことだったってことで落ち込まないでね」

みぃは少し速水に遠慮しながら言った
速水は首を振りながら

「私がそんなこと思うわけないよ」

そう言って、母のことを思い出した
本当に優しい人だった

康太は何もわかっていない風を装っていたが
もちろん、わかっていたのだろう
速水は人に大ぴらに言えないことだけれど
母は確かに私たちに素晴らしいものを残してくれたと
しっかり確信した

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康太とみぃにその話をすると
康太は

「姉さんのことだから、その障害のある人に
何か優しく言葉をかけたんだろうな~」

速水はその時はそれにうなずいていたが
康太が帰って、みぃだけになると

「そうじゃないんでしょう?」

みぃに本当のことを聞いてみる
みぃは頷きながら

「私も詳しくは知らないけれど
うちには、昔のスタッフもいるしね
まだ、私があの小屋に入る前だったらしいわ」

そう言いながら、教えてくれた
その昔、障がい者に対しての理不尽な風当たりは
ものすごく強かった

「あの頃、ううん、今もそうだけど
風俗に入る人間、そのスタッフ
ロクな人生じゃないのに
とくに、風俗ではバカにしたりする女が多かったらしいわ
まぁ、お金を莫大に持っていれば
それなりの対処はしたらしいけれど
障がい者に対しては、ぼったくりもいいところで
お金は倍取ったとかいう噂だったわ」

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「私の父はいわゆる、障害がある人間で
生きていくことに絶望していました
祖父は半生のすべてを、父に捧げていましたが
父は死ぬことしか考えていなかったそうです
祖母に対しては
なぜこんな体に産んだのかと
ほとんど毎日のように責めて、祖母は精神的におかしくなって
自殺したそうです
その父がお宅のお母様に
生きていく気力や生きがいを与えてもらったそうで
祖父は長いこと、感謝していました
一度はお礼をと思っていたようですが
なかなかそんなわけにもいかず
父も早くに亡くなったんですが
僕の母と結婚できたのもミキさんのおかげだと
言っておりました
その母も病気で亡くなってしまいまして」

そんな話をして帰って行った
母が何をしたのか具体的なことは何も聞けなかった

速水は少し首をかしげたが
みぃに聞いてみることにした
何となく思い当たる気もしたのだが

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